株式会社エンバイオ・エンジニアリング

Soil Contamination
土壌汚染対策サービス
エンバイオ・エンジニアリングは、土壌汚染対策に必要なサービスを最初から最後まで、ワンストップでご提供いたします
Construction
建築工事サービス
土壌汚染を調査・対策した土地に建築工事を行い、新たな価値を提供します。土壌汚染対応を含まない新築案件も広く承ります。
Blue Water and Green Energy
⽔と電⼒のソリューション事業
⽔環境保全やエネルギーに関して、お客様がそれぞれ抱える課題に寄り添いワンストップで問題解決を⾏います。
Environmental, Health and Safety
EHS関連事業
日本国内はもちろん、幅広い国地域(アジア・ヨーロッパ・北中南米等)においても、EHS関連サービスをご提供しています。
Items
製品販売-土壌汚染関連機器・資材の販売・サポート
土壌汚染対策のための、各分野に特化した優れた製品を中心にご提供しています。
2022.04.18

人権デューデリジェンス(人権DD)後編

本原稿は「人権デューデリジェンス(人権DD)前編」からの連続記事です。

日本における人権DDでは何が行われるのか。前編後半では、海外法人本社の日本拠点への内部監査が、日本での人権DDの契機として存在することに言及した。
日本国内の複数拠点にまとまった従業員を抱えている企業では、自社内にEHSを管理する部署を持ち、自社スタッフで運用を行っているケースが多い。一方、最近問い合わせが増加しているのは、少人数で日本法人を運営、オフィスビルの一角に入居しているような企業からだ。従業員50人未満の小規模な法人では、労働安全衛生法において定められている「衛生管理者」の設置義務はない。労働環境の保全に担当人員を置くことが難しい状況では、オフィスの作業環境が適正に管理されていることの確証を得るため、外部の専門家に依頼し内部監査を行うことも有効な施策の一つだ。日本国内の常識だけで判断すると過剰な対応にも見えるが、この背景には、特に旧植民地を持つ国々にとって「劣悪な環境での労働は人権侵害にあたる」という前提が存在するためである。
いざ人権DDを行う上で、その基準となる目線は大きく分けて2種類存在する。「現地(日本)での遵法性を満たしているか」と「本国(本社)の基準が日本拠点でも満たされているか」であり、各企業の方針により優先度に差はあるが、基本的にはこの両方を満たしていることが求められる。依頼を受けた外部のコンサルタントが見るべきは、フロアのトイレの数といった一度チェックすれば問題ないものから、温度や湿度、明るさといった継続的に監視すべきものまであり、日本基準及び本国基準のチェックシートに従って確認する。もっとも日本の小規模オフィスの作業環境にまで気を使うような先進的企業は、丸の内の高層ビルにオフィスを構えるような企業が多く、特に対策しなくとも所与のものが基準を満たしているケースが大半である。

実務上は問題を指摘されることが少ないとしても、独立した現地法人に、外部の目を入れることのメリットは大きい。短期的な収支によって撤退の選択肢が出やすい小規模な現地法人では、そこを任されたマネジメント層にとって、快適な作業環境を整えることはつい後回しになりがちだ。オフィス環境の向上は、長期的に業務の有効性や効率性を向上させることに繋がるが、短期的な経済合理性とはトレードオフの関係となる。専属の人員を抱えないことの経済的合理性のみならず、事業の継続的な発展の観点からも、外部の専門家を利用することが望ましい。外部の専門家の指摘が入ることで、今まで認識すらしていなかった問題点が共有され、企業が抱える負のリスクを少しだけ低下させる。我々コンサルタントも、たとえ監査の結果は同じだとしても、チェックシートに塗り絵するだけで終わらせず、「企業の事業リスク」に携わる業務の意義を深く認識する必要がある。

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コソボ共和国の北部、人口約7万人の「分断の町」と呼ばれるミトロヴィツァ。イルバ川を挟んで、北にセルビア系、南にアルバニア系の住み分けが行われている。何を貴ぶべきかはコミュニティによって異なり、歩いて橋を超えると、人権の基準が微妙に異なる。
(文責:渡辺 英喜)