株式会社エンバイオ・エンジニアリング

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2022.01.11

目標の背景

年始は会社から近い神田明神(神田神社)で迎えることとなった。多くの人が神社を訪れ、こういう一年にしたいと願い、目標を立てる。初詣は日本の文化に深く根付いた習慣であるが、参加する当事者達に世界最大級の宗教行事という意識はあまりない。三が日で約300万人が参拝する明治神宮の初詣は、メッカ巡礼と同じカテゴリーである。


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2022年元旦の神田明神。海外に行くようになってからは国外で正月を過ごすことも多くなったが、日本に居る年は、物心ついた頃から正月三が日のどこかで神社にお参りに行っている。

神社は沢山の人で賑わっていた。新年になり段々と目の前の列が掃けてきて、本殿が近づいてくる。だが、順番が近づいてくるにつれ、何を一番にお願いしていいのか分からなくなってきてしまった。何を欲しても自由なのだが、時間や資本といった資源は有限で、全ての目標には優先順位が付いてしまうからだ。「こういった一年にしたい」、素直にその年の健康を願うには、些か欲深くなり過ぎてしまった。

年度の目標とは何なのか。概念的には、「目的」があって、「方針」が定まり、その下に「目標」となる。目的は組織のビジョンを反映し、個人レベルでは信念や信条と置き換えられるかもしれない。一方、目標とはより具体的なもの、数字であったり、測定可能な○○を達成する、であったりする。何となく進みたい方向性は決まっているはずなのに、それが具体化できない理由は、未来の不確実性によるところが大きい。
人間は時間軸に不自由な生き物である。10年後の未来を判断の材料としようとすると、周りの環境だけでなく、自分自身がどうありたいか、何に重きを置くか、ということ自体が変わっている可能性が容易に想像できる。それを現在に割り引いて考える時、具体的に「今」何を優先すべきか、明度が下がってしまう。1年後ですら、まだ名前のないモノや、概念として認識すらしていないような何かに重きを置いているかもしれない。
そういった込み入った状況で人は、つい楽をしようとする。無意識的に、変数の多い状況を捨て、目の前に見えている簡単な肢を選びがちだ。ビジネスにおいて、「こうやって成功した」という幻影に囚われがちなのは、変化を黙殺した選択が「楽だから」である。しかし、目を背けても周りは止まらない。ルールがあって結論が決まっているような分野については、業界全体が再編されていく。これまで大真面目に裁量の余地があると思っていた仕事ほど鮮やかに、一方でそんなもの仕事にならないとされていた分野が、次の金脈になる。そして、それが最大限に効率化されて一番稼げる時期は、衰退が始まっている。個の人生レベルでも同じで、楽しさのピークは下降の始まりで、学びを止めた人間は過去の再生産を語りながら衰えていく。変化の必要性を感じつつ、見えない近未来に恐怖感を抱き、漠然とお願いする。「次の道が開けますように」


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(文責:渡辺 英喜)