2021.02.26
中国のDX事情
ここ一年、現金を使う場面がなく、財布を触る機会すらない。それくらい中国ではキャッシュレス化が進んでいる。今回は生活に密接な中国DX(デジタルトランスフォーメーション)事情を取り上げたい。
商店での買い物。店に自動スキャン機がある場合、店側が品物代金を入力、顧客がスマートフォンのQRコードを映し出し、スキャン機に読み取らせると支払いが完了する。スキャン機がないような小規模な出店等でも、品物の隣に、必ず売主のQRコードが貼ってあり、顧客がスマートフォンでそれをスキャンし、購入代金を入力して確認ボタンを押す。おつりのやり取りは生じない。
QRコードでの支払いのためには、個人のスマートフォンに専用アプリをインストール必要がある。2種類が広く普及しており、Alipay(支付宝)とWeChatPay(微信支付)がある。WeChatPayは通常の支払い機能に加え、友達や親戚にラッキーマネー(お年玉など)を送ることができ、社交性を重視するシステムとも言える。一方、Alipayでは、電話代のチャージ、水道代、電気代、ガス代、インターネット代等の支払いまで、アプリ一つで完結できる。 AlipayやWeChatPayを使うためには、個人の銀行口座とリンクさせ、預金を予めアプリのシステムにチャージをして使用する。スマートフォン紛失時に備え、チャージ金額を小分けにすることもできる。外国人には中国で銀行口座開設のハードルが高いが、クレジットカードからのチャージも可能だ。
DXは支払いだけに留まらない。今、中国では街で流れタクシーを拾う人が少なくなってきている。アプリを使用し、目的地を入力するだけで、配車タクシーのナンバーや運転手の携帯番号等が表示される。タクシーの位置情報もリアルタイムに表示され、タクシー待ちにイライラ感が低減される。呼んだタクシーが来ない、或いは乗客が既に別のタクシーに乗ってしまった、というトラブルもある。この場合、アプリ内での評価が下げられ、度重なると、使用に制限をかけられることもある。
最後に、デジタル人民元について少し触れたい。デジタル人民元の使用は、蘇州、成都、深セン等の都市での実証実験の段階に留めてられている。一般市民にとって、デジタル人民元は、単に紙幣の代わりに、電子貨幣をスマートフォンで受け渡しができるものである。使用時の感覚はAlipayやWeChatPayとあまり変わらないらしいが、本質的には違う。AlipayやWeChatPayは財布に相当するが、デジタル人民元はデジタル上の貨幣である。便利な面はもちろんあるが、不都合を感じる人もいるのは確か。デジタル人民元では、全ての取引が追跡でき、マネーロンダリングや賄賂を目論む人達にとって大きな障害となる。 また、中国がデジタル人民元導入を目指す大きな理由として、ドル基軸の銀行送金システム(SWIFTシステム)から脱却も噂されている。
商店での買い物。店に自動スキャン機がある場合、店側が品物代金を入力、顧客がスマートフォンのQRコードを映し出し、スキャン機に読み取らせると支払いが完了する。スキャン機がないような小規模な出店等でも、品物の隣に、必ず売主のQRコードが貼ってあり、顧客がスマートフォンでそれをスキャンし、購入代金を入力して確認ボタンを押す。おつりのやり取りは生じない。
店内の「支付宝(Alipay)」と
「微信支払(WeChatPay)」の支払
「微信支払(WeChatPay)」の支払
Alipay(支付宝)と
WeChatPay(微信支付)の共通QRコード
WeChatPay(微信支付)の共通QRコード
QRコードでの支払いのためには、個人のスマートフォンに専用アプリをインストール必要がある。2種類が広く普及しており、Alipay(支付宝)とWeChatPay(微信支付)がある。WeChatPayは通常の支払い機能に加え、友達や親戚にラッキーマネー(お年玉など)を送ることができ、社交性を重視するシステムとも言える。一方、Alipayでは、電話代のチャージ、水道代、電気代、ガス代、インターネット代等の支払いまで、アプリ一つで完結できる。 AlipayやWeChatPayを使うためには、個人の銀行口座とリンクさせ、預金を予めアプリのシステムにチャージをして使用する。スマートフォン紛失時に備え、チャージ金額を小分けにすることもできる。外国人には中国で銀行口座開設のハードルが高いが、クレジットカードからのチャージも可能だ。
DXは支払いだけに留まらない。今、中国では街で流れタクシーを拾う人が少なくなってきている。アプリを使用し、目的地を入力するだけで、配車タクシーのナンバーや運転手の携帯番号等が表示される。タクシーの位置情報もリアルタイムに表示され、タクシー待ちにイライラ感が低減される。呼んだタクシーが来ない、或いは乗客が既に別のタクシーに乗ってしまった、というトラブルもある。この場合、アプリ内での評価が下げられ、度重なると、使用に制限をかけられることもある。
スマートフォンのアプリ
「滴滴打車」の使用画面
「滴滴打車」の使用画面
最後に、デジタル人民元について少し触れたい。デジタル人民元の使用は、蘇州、成都、深セン等の都市での実証実験の段階に留めてられている。一般市民にとって、デジタル人民元は、単に紙幣の代わりに、電子貨幣をスマートフォンで受け渡しができるものである。使用時の感覚はAlipayやWeChatPayとあまり変わらないらしいが、本質的には違う。AlipayやWeChatPayは財布に相当するが、デジタル人民元はデジタル上の貨幣である。便利な面はもちろんあるが、不都合を感じる人もいるのは確か。デジタル人民元では、全ての取引が追跡でき、マネーロンダリングや賄賂を目論む人達にとって大きな障害となる。 また、中国がデジタル人民元導入を目指す大きな理由として、ドル基軸の銀行送金システム(SWIFTシステム)から脱却も噂されている。
デジタル人民元のイメージ写真