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2024.04.01

"地球沸騰化"発言から学ぶこと

近年、地球温暖化などの気候変動がもたらす影響に人々の関心が集まっている。2023年7月に開かれた記者会見でグテーレス国連事務総長は以下のような発言を残した。
「The era of global warming has ended; the era of global boiling has arrived.(地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来したのです。)」

この発言は2023年7月に世界の月平均気温が観測史上最高となる見通しとなったことが基になっている。日本でも全国的に猛暑が続き、北日本では気象庁による1946年の統計開始以降で7月としては過去最高の気温となった。その結果「地球沸騰化」という言葉は多くのメディアで取り上げられたため、覚えている方も多いのではないだろうか。そんな印象的な年に開催されたのが、国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(通称COP28)だ。


本コラムでは、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の採択から京都議定書・パリ協定の採択を経て、COP28に繋がる歴史を簡潔に振り返ってみたい。

まず、世界規模で本格的に気候変動対策に取り組むきっかけとなったのが、1992年に採択された国連気候変動枠組条約である。そして、本条約の下、1995年から毎年開催*されているのが国連気候変動枠組条約締約国会議(通称COP)であり、京都議定書やパリ協定は、このCOPで採択された気候変動に関する国際的な枠組みに当たる。
* 2020年に開催予定であったCOP26は、新型コロナウイルスの感染拡大により翌年に延期された。

京都議定書は1997年に京都で開催されたCOP3にて採択された。これにより2020年までの温室効果ガス排出量の削減に向けた法的拘束力のある数値目標が設けられた。そして、それ以降は2015年のCOP21において採択されたパリ協定が引き継ぐ形で新たな目標が定められることとなった。

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ここで、京都議定書とパリ協定の違いに着目する。大きな相違点は法的拘束力の適応範囲である。

京都議定書のベースにあるのは「温暖化の原因である先進国が対策を率先すべきだ」という考え方である。そのため、温室効果ガス排出量に関する法的拘束力のある数値目標は先進国のみに課せられることとなった。しかし、当時のインド・中国を含む新興国や開発途上国には法的拘束力のある数値目標が課されなかったこともあり、結果として排出量は今日に至るまで増加し続けている。また、2001年には、当時世界第1位の温室効果ガス排出国で、世界全体の約4分の1の排出量を占めていた米国が京都議定書から離脱したことで、京都議定書本来の意義が問われる結果となった。

一方、パリ協定の対象は先進国だけではなく、開発途上国を含めた全ての締約国となっており、この点では京都議定書の反省を取り入れたようにも思える。また、世界的な長期目標として「平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分下方に抑える(2℃目標)とともに、1.5℃に抑える努力を継続すること」という共通の認識が示された。しかし、パリ協定では、各国に「5年ごとの削減目標の提出・更新」が義務付けられているものの、削減目標の達成に対する法的拘束力はなく、実質的な努力義務となっている。


以上、気候変動に対するこれまでの世界の動きを簡潔に振り返ってきた。ここまで読み進めて頂いた方の中には、地球規模での温暖化の進行や現在の気候変動対策の枠組みについて、焦りや虚しさを感じる方もいるだろう。しかし、あきらめるのはまだ早い。 冒頭で紹介したグテーレス国連事務総長のスピーチには続きがあり、以下のように締めくくられている。

「The evidence is everywhere: humanity has unleashed destruction. This must not inspire despair, but action. We can still stop the worst. But to do so we must turn a year of burning heat into a year of burning ambition. And accelerate climate action - now. (エビデンスは至る所にあります。人類は破壊を解き放ったのです。しかし、これにより絶望を駆り立ててはなりません。行動を駆り立てるのです。最悪の事態を食い止めることは、まだできます。しかしそのためには、「燃えるような暑さの一年」を「燃えるような野心の一年」に変えていかねばなりません。そして、気候行動を今すぐ加速させなければならないのです。)」

スピーチでも述べられたように、地球温暖化に関する科学的知見は十分揃っている。それは幸いにも、私たちがやるべきことは明確に示されているということに繋がる。引き続き国内外の温室効果ガス排出量の削減やカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みに着目しつつ、私たち自身も「今」できることを着実に進めていかなければならない。

※この記事は執筆者の個人的な見解であり、エンバイオ・エンジニアリングの公式的見解ではありません。

(文責:玉城 慶人)