稼働中工場の環境担当者様
工場の敷地を継続して使用している場合でも、敷地内の一部で建て替えを行う場合など、土壌調査が必要になるケースがあります。工場の安定的な操業のため、900m²以上の土地の形質変更をご検討の際は、まずは地歴調査を行い、今後すべき対応を整理することがおすすめです。また、土地の形質変更等で土壌汚染が確認された場合、適切なタイミングで利害関係者(ステークホルダー)への情報公表などにより、企業の信用やブランド価値が低下するリスク(レピュテーションリスク)をケアすることが大切です。
稼働中工場の調査契機
工場の敷地を継続して使用している場合でも、敷地内の一部で建て替えを行う場合など、土壌調査が必要になるケースがあります。
土壌汚染対策法 第4条 第3項により、有害物質使用特定施設(水質汚濁防止法・下水道法)が設置されている操業中の工場等の土地において、900m²※以上の土地の形質の変更を行うときは、行政機関に土地の形質変更の届出が必要です。
また、第3条第1項ただし書に基づく調査義務の一時的免除中の土地についても900m²※以上の土地の形質の変更について、法第3条第7項に基づく届出を行った上で、土壌汚染状況調査が必要となります。
※平成31年4月に改訂され、3,000m²⇒900m²と厳格化
(有害物質使用特定施設(水質汚濁防止法・下水道法)の有無に関わらず土地の形質の変更の部分の面積が3,000m²場合、土地の形質変更の届出が必要)
事例:敷地内の空きスペースに倉庫を新設
同一の敷地内に有害物質使用特定施設を有する場合、「土地の形質の変更に着手する日の30日前まで」に行政機関への届出と調査を行う必要があります。
まずは地歴調査(リンク有り)が必要で、特定施設以外での有害物質の使用履歴、土壌汚染対策法以外に適用を受ける可能性のある条例等を確認し、行政窓口へ協議に行くことが必要となります。
注意すべきポイント
工場の安定的な操業のため、900m²以上の土地の形質変更をご検討の際は、まずは地歴調査を行い、今後すべき対応を整理することがおすすめです。
リスクコミュニケーション
土地の形質変更等で土壌汚染が確認された場合、適切なタイミングで利害関係者(ステークホルダー)への情報公表など、レピュテーションリスクをケアすることが大切です。レピュテーションリスクとは、企業に対する否定的な評価や評判が広まることによって、企業の信用やブランド価値が低下し、損失を被るリスクのことを言います。
リスクコミュニケーションの目的は意思疎通それ自体にあるのではなく、多様な利害関係者との信頼関係の構築にあり、企業の存続と成長にとって不可欠です。
リスクコミュニケーションには法律やリスク・対応の専門家
リスク=マイナスイメージであり、そのような情報を積極的に共有したくないというのが企業心理ですが、マイナスの話題を共有する相手は利害や価値観の異なる個人・組織であることが一般的です。意思疎通を図ることは容易ではない上、企業が抱え、周囲にもたらすリスクは複雑な法律や技術的な側面を含むことが少なくありません。
例として、建設プロジェクトの基礎工事で土壌汚染が確認された場合、経済効果を優先すると周囲へ理解を求めるための時間を軽視しがちになります。しかし、住環境が何よりも大切な地域住民からすれば、現に確認されている土壌汚染に対する健康リスクがないことを強調されただけでは十分ではありません。
このようなケースでは、土壌汚染状況調査の結果などの開示情報、似たような工場で土壌地下水汚染が発生した事例、等を適切なタイミングで関係者と共有することを慎重に検討しなければなりません。また、たとえ地域住民向けに説明会を開催したとしても、専門用語だらけの難しい説明を繰り返せば感情を逆なでする可能性があります。事業者側の不適切な対応をすれば、場合によっては取り返しのつかない状況となり、社会的信頼を失います。
企業にとって重大なインパクトをもたらすものでありながら、容易にはいかないのがリスクコミュニケーションです。しっかりとした取り組みが要求されるため、プロセスには最大限の慎重さと綿密さが必要です。そのため土壌汚染を発見した場合、多様な利害関係者の存在を認識した上で、法律やリスク・対応の知識を有する専門家と共に対応にあたることを推奨しております。
リスクコミュニケーション例
工場の安定的な操業のため、900m2以上の土地の形質変更をご検討の際は、まずは地歴調査を行い、今後すべき対応を整理することがおすすめです。
リスクコミュニケーションのメリット
- 株主
- 企業が抱えるリスクや許容できるリスクを開示する姿勢は信頼に繋がり、投資する側へ安心感を与える。
- 地域住民
- 適切な相互コミュニケーションを図ることで、合意形成した中でプロジェクトを進めることができ、後に出てくる可能性のあるクレームや訴訟リスク等を予防することができる。
- 取引先
- リスク状況を知っておけば、問題が発生した場合に、自社が受ける影響を事前に見積もることができ、影響を最小限にできる。
Q&A
稼働中工場における土壌汚染対策でよくある質問集です。ご参考になさってください。
- 稼働中工場や、建物がある敷地でも土壌汚染調査はできるのですか?
- 操業中の工場や建物が残っている敷地でも、部分的な土壌汚染調査は可能です。工場などの場合、稼働中の敷地で調査を実施させて頂いております。発注者様(担当者様)と協議・相談をしながら、調査場所の確保・作業スケジュールを決めて調査を行います。一部ラインを止めて頂く場合もありますが、稼働日以外の日に実施することも可能です。また建物がある敷地でも状況に応じて対応します。
- 土壌汚染対策法に基づく状況調査は、どんな場合に実施するのですか?
- 対策法では、健康被害を防止することを目的に、下記の条件を満たす場合に調査を義務づけています。
【土壌汚染対策法に定める調査契機】- 有害物質使用特定施設の使用の廃止時(第3条)
- 一時的免除中の土地(第3条1項ただし書)を含め、一定規模(900㎡)以上の土地の形質変更の届出の際に、土壌汚染があると都道府県知事が認めるとき(第4条)
- 土壌汚染により健康被害が生ずるおそれがあると都道府県知事が認めるとき(第5条)
「土地の形質変更」とは、土地の形状・性質の変更のことで、宅地造成、掘削・盛土等が該当します。施設等を新設・建替する場合だけでなく、場内の舗装道路の張替等も含まれます。 - 特定有害物質の取り扱いがないため、地歴調査ではなく土壌調査を実施しようと考えています。
- 自社の事業活動以外にも汚染原因がある場合があり、十分に注意が必要です。自然由来の基準不適合等が考えられるため、特定有害物質の使用等履歴がない場合であっても、基準値を超過するケースがあります。特定有害物質の使用等履歴がないのであれば、地歴調査を実施し、対象地の利用履歴より土壌汚染の可能性を判断することをお勧めします。
【主な汚染原因例】- 人為的汚染(事業者の事業活動で発生した汚染)
- もらい汚染(近隣事業者の活動で発生した汚染)
- 埋立由来(持ち込んだ土壌に含まれる汚染)
- 自然由来(元々自然界に存在するもの)(注)
将来的に土地取引を前提にする場合は、特定有害物質以外に油分やダイオキシン類についても考慮すべきです。また対策法の規定物質の種類や基準値は、今後変更される可能性がありますので、調査の実施時期は適切なタイミングを検討する必要があります。 - 将来的な土地の活用に向けて注意すべき事項はありますか?
- もし将来な土地利活用を検討している場合、操業時から検討・実施すべき事項があり、操業時の汚染の未然防止・早期発見が重要です。また、操業中や調査義務の一時的免除を受けている土地の形質を変更する場合は土壌汚染状況調査が必要になることがあります。
【将来の土地の利活用のために実施しておくべき項目】- 事業場の立地条件から土地売却を含む土地活用の方向性の明確さ
- 過去の行政届出文書を整理して保管
- 更地後の調査を効率化するための、設備・配管の位置・利用状況等が正確に把握できる図面・文書の保管
- 事業場内の土壌等の移動履歴を把握し、文書化して保存
- 将来的に土地売却を予定している場合の操業時からの対策実施の検討
- 弊社の事業場は複数の自治体に存在するのですが、何か注意すべき事項はありますか?
- 都道府県・市町村には、土壌汚染対策法に上乗せの条例・要綱を定めている場合があります。東京都の上乗せ条例では、形質変更する土地面積ではなく敷地面積に規模要件が付与され、その地歴調査の実施を義務づけています。また、今後も法改正にあわせて各自治体の条例も見直しが進むと予想されます。エンバイオ・エンジニアリングでは常に新しい動向に対応していますので、是非お問い合わせください。