詳細
1.はじめに
当該サイトは、不法投棄された廃棄物の撤去の他、一部の廃棄物を地中連続壁で封じ込め残置した不法投棄廃棄物除去工事の現場であった。しかし、地中連続壁で封じ込めを行った外側周辺においても1,4-ジオキサンが土壌や地下水に残留していることが判明した。1,4-ジオキサンは主に第2帯水層に残留していたことから、主に第2帯水層の土壌と地下水を対象として、フェントン反応剤を用いた原位置浄化対策工事を行った。
2.対象地
不法投棄が行われたこの現場は、河岸段丘崖および斜面から氾濫原にかけた2級河川に沿ったエリアで、河岸段丘の頂部には竹林や人家が存在している場所であった。 1,4-ジオキサンが残留していた第2帯水層の土質は、礫や粗砂が主体であるもののマトリックスに粘性土が介在していた。第2帯水層の下の不透水層(シルトや粘土の互層)にも1,4-ジオキサンは浸透していることが対策中の調査で分かった。
3.対策の内容
対策に先立ち、1,4-ジオキサンによる汚染が確認されていた観測井戸周辺において、土質の確認と深度別の土壌および地下水中の濃度分布を把握するためにボーリング調査を行った。その後、ボーリング調査の結果(1,4-ジオキサンの濃度分布や土質柱状図)に基づき、対策範囲やフェントン反応剤の原位置注入計画を立てた。原位置注入を実施する前には注入試験(パイロット試験)を実施し、注入のための諸条件(注入速度、フェントン反応剤の配合濃度)を発注者と協議して決めた。今回用いたフェントン反応剤は、特許第4700083号「地下地盤の原位置化学酸化浄化処理方法」のpHを中性域に調製した混合水溶液を原位置に注入する方法で、地上への漏れ(リーク)や重金属類の溶出抑制を可能とする方法を採用した。また、注入方法は、超多点DP(ダブルパッカー)工法により目的深度に全地点同時注入を行った。
4.対策の結果
今回実施した対策では15か所の観測井戸周辺へフェントン反応剤の原位置注入が実施され、土壌および地下水の1,4-ジオキサン濃度が13地点で環境基準に適合した。 1,4-ジオキサンは水に溶けやすいため、汚染残留域に効率よくフェントン反応剤を注入浸透させる必要があり、汚染残留域のある程度正確な把握が必要であった。そのため、事前にトリタビリティー試験やパイロット試験を入念に実施したうえでの計画立案~施工実施となった。しかし、実際のサイトの土質は砂質土と粘性土が入り組んでおり、土壌に残留する1,4-ジオキサンの濃度の分布や地下水の深度別濃度分布はばらつきが大きく、当初設計したフェントン反応剤注入量とはならなかった。トライアンドエラーを繰り返しながら注入量を変更していき、最終的に13地点での環境基準への適合を確認できた。