労働安全衛生(OHS)リスク対応支援
OHS(Occupational Health and Safety / 労働安全衛生)を評価、改善提案をするサービスです。OHSとは職場の労働安全衛生のことを指し、心身の健康が担保された職場を働く人に提供することは、使用者の責任であり、義務となっています。
OHSリスクとして、自社拠点やサプライヤー の安全や職場環境、コンプライアンス等へ注意を払うことは、企業の訴訟リスクやレピュテーションリスク の低減にも繋がり、安定したサプライチェーン の維持に役立ちます。
OHS / 労働安全衛生対応が必要になる場面
ヨーロッパ・北米等に本社を持つ企業からの要望や、内部監査の結果、国内外の日系企業・日本に拠点を持つ外資系企業がOHS対応を迫られるケースが多くあります。
- ヨーロッパの本社から、日本拠点での緊急事態(自然災害・火災等)対応のための訓練を求められた。
- 北米に本社を取引先が、マレーシアの製造拠点の監査にくることになった
- タイ拠点の内部監査で労働安全衛生の改善事項が見つかったが、現地の遵法性について確認できていない。
日本国内においては、従来、”安全第一”の考えから”安全>衛生”として考えられがちですが、取引先等から監査が入る際は、安全面と等しく衛生面についても確認されます。外部の目は、日系製造業が多く進出するアジア圏においても年々厳しくなっています。
欧米に本社をもつ企業を中心に、自社の海外拠点の子会社だけでなく、そのサプライヤーの工場まで監査を行い、OHS状況の改善指導を行うケースがあります。
環境面と安全衛生面の共通項
日系製造業においては”安全”と”環境”は異なる部署で管理されていることが多いですが、外資系企業では、環境(Environmental)と労働安全衛生(Health and Safety)の両者の”リスク(Risk)”を同部署で扱うことが多くあります。
リスク(Risk)とは、「危害の発⽣確率」×「危害発生時の重⼤度」で表され、環境汚染も人身事故等の懸念についても、リスクが高いものが優先して対策が取られます。
危害(Harm)を引き起こす潜在的根源として、”危険源(Hazard)”があります。OHSリスクマネジメントにおいては、危険源対策を適切に行うことが求められます。
危険源(Hazard)対策の優先順位
危険源対応の考え方についてはISO 45001においても言及され、箇条8.1.2”危険源の除去及び労働安全衛生のリスク低減”では、a)除去、b)代替、c)工学的対策、d)管理的対策、e)個人的保護具、の優先順位でリスクを低減することが記されています。
OHSリスク診断の流れ
エンバイオでは、国内外拠点のOHS(労働安全衛生)リスクについてもお客様のニーズに沿った支援サービスを提供しています。
特に海外拠点において、サプライヤーが求める基準、現地の遵法性を考慮した視点、ISO 45001:2018 / JIS Q 45001:2018(労働安全衛生)の視点、”日本の基準(労働安全衛生法等)と比較して”、等を考慮したリスクの診断、改善提案が可能です。
M&A(企業買収)の局面においても、対象企業のOHSリスクを評価した例もございます。
環境デューデリジェンス(環境DD)は、対象用地の環境面のリスクを把握し、適正に評価するために実施するもので、土壌汚染リスクや排気廃水、遵法性などについて、取引に重大な影響を与えうる情報を整理します。
M&Aのデューデリジェンスにおいては、EHS(Environmental Health and Safety)リスクとして、環境(Environmental)と労働安全衛生(Health and Safety)の一体の評価が求められることもあります。
精神衛生(メンタルヘルス)に関連する企業リスクとは?
企業が抱えるOHSリスクとして、従業員の身体的な健康だけでなく、精神的な健康(精神衛生/メンタルヘルス)も考慮する必要があります。環境面や安全面の法規制に比べ、法規制がまだまだ発展途上ではありますが、精神衛生面に関する法規制についても近年厳格化しています。
それに伴い、「いじめやパワハラといった明らかに不適切な状態」「労働時間といった数字の基準があるもの」だけでなく、一見すると分かりにくいが遵法性を満たしていない状態を監査等で指摘されることが出てきました。
ストレスチェックの流れと運用上の注意
労働安全衛生法により、労働者50人以上の事業所にてストレスチェックの実施が義務となっています。ストレスチェックは、労働者にストレスへの気付きを促すとともに、その原因となる職場環境の改善につなげることで、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止(予防)を目的としています。ストレスチェックの結果は、検査を実施した医師、保健師等から直接本人に通知され、本人の同意なく事業者に提供することは禁止されています。
企業はテストを受ける機会を提供するだけでは十分でなく、その運用が正しくされていない場合、遵法性を満たしているとはいえません。例えば、「人事総務系の管理職に結果の通知がいき、高ストレス者への医師面談の推奨が行われた」のは、遵法性を満たしているとは言い難い事例です。
また、高ストレス者であることを推察されるような通知の方法は避けるような配慮が必要ですが、メンタルヘルスに関する案内等のメールにて宛先順から簡単に他従業員に判明してしまうなど、配慮ができていない例も確認されています。
このように、日本企業が現地法規制についてよく理解しているはずの日本の拠点においても、外部監査で指摘を受けるような状態が発生することがあります。
Q&A
- 何故サプライヤーのOHSリスクまで確認するニーズがあるのですか?
- 複数国に拠点を持つ企業を中心に事業リスクの一つとして認識されています。1990年代後半、米国アパレルメーカー製品の製造を行うインドネシアやベトナムの工場にて、低賃金の長時間労働、児童労働等が発覚しました。NGO団体を中心に委託元の企業のCSR(Corporate Social Responsibility / 企業の社会的責任)が厳しく言及され、世界的な不買運動に発展し、企業がサプライヤーの労働環境を積極的にケアする契機となりました。
また、上記の例のように倫理的な問題まで発展するケースを懸念し、「人権DD」として監査が行われることがあります。 - 従業員の精神的な健康を評価する際、指標となる国際的な基準はありますか?
- 2021年6月に、ISO 45003:2021(職場での心理的健康と安全-心理社会的リスクを管理するためのガイドライン)が新たに発行されました。この規格は、精神的な健康の管理に関するガイドラインで、効果のないコミュニケーション、過度のプレッシャー、脆弱なリーダーシップ、組織文化など、労働者の心理的健康に影響を与える可能性のある多くの分野に対応しています。
- オフィスのOHSリスクについてはどのように評価しますか?
- 拠点のある国地域での遵法性を満たしているかをまず確認します。日本国内においては、オフィスの明るさ、休憩室、トイレの数といった定められた基準を満たしているかという点が問題となり、現地調査にてオフィスの現況を確認することが一般的です。